NHK「新プロジェクトX〜挑戦者たち〜」が復活して2ヶ月余り。Season1もほぼ欠かさず見てました。
時代背景は変わろうとも根底にある共通のキーワードは、
- 絶対に成功させるという執念/技術者としてのプライド/情熱
- 友情/役職を超えた絆/垣根を超えたチーム
- 挫折と成功/逆転の発想
そして欠かせないのが、〝厳しくも人間味あふれる親父のようなリーダ〟の存在。
実は私も某製造業の出身で、若いころは情報通信機器の開発に携わりました。入社当時「〝企業は金なり〟というけれど、ウチは〝企業は人なり〟だからね」と言われたのが印象的でした。今でもその文化は、ちゃんと根付いているように思います。
一方で当時、時には上司から「徹夜して一人前!」とか、「お前の頭は帽子掛けか!」とか叱られたり、イキがって事業部長に反論した時に灰皿が飛んできたこともあって、今なら完全なパワハラ。でもその頃はみんなが熱かった!
〝クソッ!今に見てろよ!〟をバネにしたと思っていたけど、後から、先輩など誰かがちゃんとフォローしてくれていたことを知って、企業は人なり…というのはこういう事なんだと身に染みたのを覚えています。
私が携わった情報通信機器は、今、この世にはありません。でも事業部門・研究開発部門・製造部門が垣根を越えて一体となって取り組み、顧客の協力も得て生み出した製品は手作り感満載。その意味では、確かに顧客も我らチームの一員でした。お客様にしたらいい迷惑だっただろうけど…。しかしその分、愛着に溢れ、今でも私たちの財産であり、当時のメンバと会った時には、何時間でも笑って語り合える!辛かったことも…いや、辛かったからこそ!まさに人知れず消えた私たちだけのプロジェクトX!
プロジェクトXという番組は、こんな私たちに向けたエールだと感じます。
対して現代は?
モノづくりが好きだからメーカに入った、飛行機が好きだから航空会社に入った…っていう純粋な動機で企業を選ぶ人は少ないのかもしれません。このような純粋な情熱は大切で強いものだと思うのだけれど。
そして今、上司や先輩から注意されたら、すぐ「パワハラだ!」「辞めます!」という若手社員。そんな社員に気を遣い、疲れている上司や先輩。こんな風潮からはプロジェクトXは生まれないだろうな。
さらに残念なのは、
VHSという世界基準をつくったビクター、初の日本語ワープロを世に出した東芝、液晶で一世を風靡したシャープなど日本を代表するメーカが、吸収合併や上場廃止、外国資本配下になったこと。〝ものづくり、価値づくり〟したものの、継続できなかった哀しい現実。
成功したのになぜ凋落の憂き目にあってしまったのか?
- 成功体験の余韻を吹っ切れなかった、胡坐をかいた?
- グローバル化、デジタル化など社会環境の変化やニーズ多様化に乗り遅れた?
- 「シナジー効果」や「集中と選択」といった一見きれいな言葉に踊らされ、本質を見誤り、実態が伴っていなかった?
- 欧米式経営の中途半端な導入では、日本式経営の課題解決にはならなかった?
しかしなにより冒頭に挙げた、「厳しくも人間味あふれる親父のようなリーダ」を欠いたこと、つまり人と組織を動かす強いリーダシップをもつ後継者が現れなかった、育たなかった、育てることができなかったことが最大の要因のようにも感じます。
…まさに〝企業は人なり〟なのに‼️
(おまけ)
日本能率協会が行った「CTO Survey 2020 日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査報告書」によれば、
■研究開発投資について、3年前と比べた現在の状況は
- 研究開発全体では、「横ばい」が50.4%と最も多い(「増加」は34.8%)
- 新規事業に関する商品・サービス開発では、「増加」が39.8%と多数
■中長期的な競争力維持のための研究開発投資が行われているか
- 全体では、「そう思う」(強く~ややの合計)の比率は47.5%であるのに対し、「そう思わない」(あまり~まったく の合計)の比率が50.7%となっており、研究・開発部門の責任者の観点からすると、半数以上の企業において、十分な研究開発投資が行われていないという認識がうかがえる。
短期で成果が求められる今、時間をかけて研究開発する余裕も猶予もないのかもしれません!
(ま)