先日、某大手の営業さんと顧客訪問した時のはなし。
営業:「新組織・新体制になったので、上司のご挨拶をさせていただきたい」と申し出たところ、
顧客:「そんな無駄なことはしなくていい」とピシャリ!
そう…私も常々、毎年この時期に繰り返される〝恒例行事〟を不思議に思っていた。
- 新年度に新上司の挨拶は必要か? 上司は〝挨拶パフォーマンス〟の体なんだろうけど、新年度の数ヶ月間、営業は新旧引き継ぎや挨拶スケジュール調整に追われ営業活動は停止する、いわば営業の空白時間帯になってしまうのに。
- そもそもなぜ毎年、組織変更を行うのだろう? しかも組織変更の主旨説明はあるが、過去の振り返り(反省や課題)は聞いたことがない
- しかも、事業部制だ/カンパニー制だ/機能別だ/マトリックス制だ…の繰り返し
最近は従来の「ヒエラルキー組織」に対して、「ホラクラシー組織」が注目されているようだ。
「ホラクラシー組織」に似た形態として「ティール組織」や「DAO(自律分散型組織)」なんてのも見かける。
自分の整理のために各々の特徴を比較してみると…、
ヒエラルキー組織 |
ホラクラシー組織 |
ティール組織 |
DAO |
ピラミッド型の階級的組織構造 |
全社員が平等な権限を持つ、フラットな組織構造 |
信頼で結びついている メンバは対等(フラットな関係) |
ガバナンストークン(電子証票)を持つ者は誰でも参加 |
人による管理 自由度は低い |
ルール(憲法)による管理 自由度が低く、実践的に運営 |
ルール化してない 自由度が高く自発的 |
参加メンバが自主的に共同管理 |
組織のトップが意思決定 |
ロール(役割)単位で意思決定 |
一人ひとりが自立し、現場メンバが必要に応じて意志決定 |
コミュニティで意思決定 |
限定的な情報共有 |
すべての情報を共有 |
すべての情報を共有 |
すべての情報を共有 |
ヒエラルキー組織の中で働いている従業員からみると、ホラクラシー組織やティール組織は、さぞ魅力的に映るのではないか? ヒエラルキーの経営者は敬遠したがるだろうけど。 ただ〝組織を活性化したい〟〝優秀な人材を確保したい〟〝ビジネス規模を大きくしたい〟といった組織の課題(願い)のためには一考の価値はある。
さすがに別世界のDAOは置いておいて、長い間ヒエラルキー組織になじんできた人たちにとって、いきなりホラクラシー組織やティール組織に移行するのはムリがあるけど、毎年ヒエラルキー組織の〝中〟だけで組織イジリを繰り返すくらいなら、一度、広い視野で、長いスパンで、部分的にでも、組織改革を見つめ直してみたらどうだろうか。決して〝良さげな言葉〟だけに飛びつくのではなく…!
ちなみにフリーランスの私が最近お世話になっている会社のウチ2社の運営は、上記の4つとも少々異なる。
1社は、「フリーランサーやパートナ企業の方々とバーチャル組織を作って、お客様の課題に挑み、そして解決」が、もう1社は、「プロフェッショナル集団によるコミュニティ企業」がキャッチフレーズ。表現は違えども、この2社が共通しているのは、会社の正社員は数名…社長、ビジネスコーディネータ、契約担当、事務担当といった感じ。顧客サービスの実務の多くを担うのは、提携関係にある自立している個人事業者やパートナ会社。しかも個人事業者やパートナ会社は、人が人を呼ぶことで輪を広げてきた信頼できる集団(信頼できる人が連れてきた人は、やはり信頼できる)。ここが巷の人材派遣会社と決定的に違うところ。
このような組織形態を「アライアンス組織」と呼んでみよう。
アライアンス組織は、ちょうどホラクラシー組織の従業員を、個人事業者やパートナ会社に置き換えたようなイメージだが、各々は自立して自発的に活動している。先にも書いた今のヒエラルキー組織の課題(組織の活性化、優秀な人材確保、ビジネス規模拡大)に対する答えの一つになるかもしれない。ただし、ビジネス規模の拡大のために、優秀な人材を〝自組織の社員として〟確保することはあきらめることになるけど。
いずれにしても優秀な人材(社内外にかかわらず)を確保するためには、会社(というか社長をはじめとする〝人〟)そのものが魅力ある存在であることが大前提!
(ま)